研究 / Research

情報社会相関研究系

新井 紀子
ARAI Noriko
情報社会相関研究系 教授
学位:博士(理学)
専門分野:情報利用
研究内容:http://researchmap.jp/arai_noriko/

サイエンスライターによる研究紹介

次世代の情報共有基盤システムを構築する

私の研究のメインは、意識したり努力しなくても、人々が知識や情報をスムーズに共有したり協調して作業をしたりするための情報通信技術(ICT)の研究と開発です。具体的には、NetCommons(ネットコモンズ)という次世代の情報共有基盤システムを開発、無償で公開して実証研究をしています。できるだけ簡便に使えるツールに仕上げることで、技術や予算が十分ではない組織であっても、情報を共有したり、ウェブ上の情報発信力が高められるようになる社会を目指しています。

簡単な操作でポータルサイトを作成・管理

ウェブサイトを構築するには、専用の言語あるいは編集ソフトウエアを用いて作成したファイルをウェブサーバーに転送するという手続きを経るのが普通です。。しかし、NetCommons をはじめとするコンテンツマネージメントシステム(CMS)を導入すれば、サーバーにインストールするだけで、ネットワークを通じて、作業をするパソコンからアクセスして、閲覧ソフトの画面上で情報を編集したり、双方向に共有できるようになります。さまざまなCMS が存在しますが、NetCommons の特徴は、コンテンツに加えて、人と、その間をつないでいるウェブ上の表現の3 つがCMS の対等な構成要素だと考えている点です。インターネットが登場して以降、情報の交換と共有という観点においては、かつてないような平等な世界が出現しました。誰もが平等に情報を発信し、多様なチャンネルを通じて今までならば考えられないような相手と情報を交換することができるようになったのです。しかし、実際の人間社会では、情報を共有する相手が、見知らぬ人、友人、同じ組織内で一緒に働いている人、顧客など、それぞれで共有したい情報のレベルが変わってきますし、ふるまいも異なるのが自然でしょう。そのような実際の人間関係の中で、私たちが自然に行っている情報共有のレベルやふるまいのコントロールを、無理なく自然に表現するための枠組みをNetCommons では提供しています。

専門技術に依らないIT 化のための実証研究

NetCommons は2001 年から開発を開始し、05 年にはオープンソース版を公開しました。08 年に公開したNetCommons2.0 では、インターフェースとデザインが大きく改善され、まるで文書作成ソフトやプレゼンテーションソフトであるかのように、操作性が向上しました。これらのソフトが使える人であれば、ウェブであることを意識せずに短時間で自分のイメージ通りのポータルサイトや情報共有の場を構築することができるようになったのです。NetCommons を用いてさまざまな団体がポータルサイト、あるいはバーチャルオフィスなどを構築しています。現在、利用団体は学校(大学以外)が約2000、大学や企業等を合計して3000 近くにまで増えました。大勢の利用者に支えられているため、付け加えた新たな機能によって、実際に情報共有が進むか否かが厳しく評価される反面で、社会的なインパクトも大きいので、やりがいがあります。
2008 年1 月には社会共有知研究センターを立ち上げ、企業などとも連携し、情報共有を促進する要因についてより具体的なモデルに基づいて検討したり、低コストで情報共有ができる社会の仕組みについて議論を深めたりしています。NetCommons を最大限に活用して、世界遺産の島である屋久島町全体を全面的にIT 化するという実証実験に取り組み、1 カ月足らずの期間、100 万円程度の費用で達成するという成果を上げています。もう1つの研究の柱は数理論理学で、証明および計算の複雑性を研究しています。2001年には、人工知能の基盤としてしばしば用いられるレゾリューションおよびアナリティックタブローの証明効率について20 年以上未解決だった問題を解決しました。また、社会活動として、数学の楽しさを伝える仕事をしています。

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取材・構成 塚崎朝子

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